仏教説話

木の実の取り合い

お釈迦様は遠くの村や町までお出かけになっては、人々にお話をなさいました。

多くの村や町の人びとは、大喜びでお釈迦様のところへ急ぎました。

村人のひとりがお釈迦様に申しました。

「おはようございます。お釈迦様から教えをきかせていただきに参りました。」

お釈迦様は村びとたちに
「朝早くから熱心に御苦労だね。
それでは今朝は、なかなか満足できない人間の心についてお話しよう。」
と おっしゃって話し始めました。

【ある時 ひとりの男が、木の実がたくさんなっている木の下を通りました。
男は
「実がひとつも落ちていないぞ。木に登って実を取ろう。」と言って木の上に登りました。

「うまい!うまい!」
男は木の上で取った実を食べながら
「これはうまいぞ。そうだ!おみやげにしよう。」と言って
たくさんの実を集め始めました。

また別の男が木の下を通りがかりました。
「おや?うまそうな木の実がいっぱいなっているのに・・・どこにも落ちていないぞ。」
その男は 「おれは木登りができないから、この木をのこぎりで切り倒そう!」と言って
持っていたのこぎりで木を切り始めました。

木の上に登っていた男は、木が傾き始めたことに気がついて、びっくりして言いました。
「危ないっ!」】

お釈迦様はおっしゃいました。

「物を欲しいと思う『欲』の心は、限りのないもので、次から次へと欲しいと思う。
この『欲』の心から苦しみが生まれてくる。
木の上の男は、早く降りてこないとひどい目に合うように、
足りることを知って、『欲』の心から早く離れて賢くなるのだよ。」

《-終-》


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