仏教説話

お弟子になったニーチ

昔、お釈迦様がある村にいらした時のお話です。
その村にはニーチという肥し汲みの仕事をしている男がおりました。

かめの中に肥しを入れて運ぶ仕事なので、村人からは「臭い、臭い」と嫌われておりました。
ニーチはお釈迦様が村においでになる事を知り、
『自分のような臭いものを運ぶ仕事をしている者が、お釈迦様がお通りになられる道を歩いては失礼である』と思い、
その道をさけるように歩いていきました。

村の人々は『お釈迦様に一目お会いしたい』と、お釈迦様のいらっしゃる所へ向かっています。
道行く人々は、ニーチに会うと「臭い、臭い。お釈迦様がお通りになる道に現れるな」と
口々にニーチに言い放っていきました。

しかし、ニーチはお釈迦様がお通りになる道を避けて歩いているのですが、
避けて歩こうとすればするほど、
前方からお釈迦様のお姿が見えるではありませんか。
ニーチは必死になって、お釈迦様に会わないようにと走っていると、
村人に「臭い奴はあっちに行け」と突き飛ばされ、背負っていたかめを割ってしまいました。
そして、かめから肥しがこぼれ、道は汚れ、臭い匂いがたちこめました。

そこへお釈迦様が現れました。
ニーチは「お釈迦様、私はとんでもないことをいたしました。どうぞお許しください。」と
深く頭を下げてお詫びをしました。
お釈迦様は「ニーチよ。何も心配することはない。私にはあなたがどんな気持ちで私の事を
迎えようとしてくれていたか全てわかっているよ。私の弟子にならないか?」とおっしゃいました。
ニーチは「私のようないやしい者がどうしてお弟子になどなれましょう。お弟子の方はみな
立派な方ばかりです。」とお釈迦様に言いました。
するとお釈迦様は「そのような事はないのだよ。私の教えの前では全ての人は皆平等であり、
何の差別もないのだよ。」と優しいお顔でおっしゃられました。
ニーチは「何という有難いお言葉、どうぞよろしくお願いいたします。」とお釈迦様の前で
涙を流し、お弟子になりました。

                                     終

 


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