昔、ヒマラヤ山の近くの森に500匹のなかまを連れたサルの王様がいました。
近くに深い谷があって、その谷にはおいしいマンゴーの樹が沢山ありました。
「みんな、気をつけるんだぞ。
マンゴーの実を川に落とすんじゃないぞ。
もし人間たちがこれを食べたら大変なことになるからな。」と
サルの王様はなかまに伝えました。
マンゴーの実は甘く香り高く一度食べると忘れられない味でした。
心配していたことがおこりました。
なかまの誰かが知らない間にマンゴーの実を1つ川に落としたのです。
マンゴーの実は川の流れに乗ってインドの町まで流れつき、王様のもとへ届けられました。
それを食べた王様は言いました。
「なんとおいしい実だ。この実を探すのだ!」
家来たちを沢山連れたインドの王様はマンゴーの樹を探しに森までやってきました。
そこでは、いつものようにサルの王様につれられたなかま達が何も知らずに
マンゴーの実を食べていたのです。
マンゴーの樹を見つけた王様は
「サル達に食べさせるなんてぜいたくだ。あいつらをやっつけろ。」と
家来たちに言いました。
それを知ったサルの王様は谷をこえて、向こうの山に逃げようとしました。
しかし、谷をこえる橋がありません。
サルの王様は「すぐに藤のツルを集めるのだ」と、なかまに言いました。
サル達はあちこちから藤のツルを集めてきました。
サルの王様はそのツルを長く一本につなぎ、片方を自分の体に巻きつけました。
「向こうの木にこのツルをくくりつけるから皆はこのツルを渡って逃げるんだぞ」
サルの王様はそう言うと、まるで鳥のように谷に突き出た岩を蹴って飛び出しました。
谷を飛んだサルの王様は一本の木の枝をしっかりとにぎり、谷から向こう岸まで
藤ツルの橋をつくろうとしました。
しかし、藤ツルが少し短かった為、木の枝にツルを巻くことができず、木の枝をしっかりとにぎり
自分の体も橋の一部にしたのです。
サルの王様は後ろを振り返って叫びました。
「さぁ、早く渡るのだ!」
木の枝をつかんだ指がだんだんしびれてきてサルの王様は木の枝から
指を離しそうになりました。
「早く さぁ 急いで・・・」とサルの王様は目をつむったまま心の中で叫びました。
王様と家来達は、その様子を黙って見つめていました。
500匹のサルのなかまがすっかり渡り終わると同時にサルの王様の指が木の枝から離れ
その体は谷底めがけて落ちて行きました。
すると王様が「すぐにサルを助けるのだ!!」と叫びました。
サルの王様が助けられるのを500匹のサルのなかまが息をのんで見つめていました。
王様は「すまなかった・・・」と心の中でつぶやき、胸を熱くしながら涙をこぼしました。
王様は町の戻り、町の皆が幸せに暮らせるように国を治めました。